鈍色に沈む





 頼られるのも助けを求めて手を伸ばされるのも、
 そんなのは自分の役割じゃないなんてことはよく知ってる

 昔から他の誰よりも、自分にだけは何があっても決して弱味をみせまいとしていることも分かっている



 あの子供は自分に手を差し伸べられる事なんて、決して望んでいないのだ


 仮にこの手を差し出しても拒否されるだろう。そんな形で示す何かは彼の中で自分には決して求められてなどいない
 それでいいのだ
 今までだってずっとそう割り切ってきたのだから、何も変わらない
 手を差し伸べる事も、又手を求められる事もないとしても、他にいくらでも自分がするべきことははあるのだから、それを貫けばいいだけだ


 だけど

 手を差し伸べられるのを望まれてるのは
 それは自分の役割でないと承知していた筈なのに



 『旦那ァ』



 後から現れた、よりにもよってあんな奴には
 そうやって頼り、認めて、躊躇いなく自分から手を伸ばすのかと


 自分でも異常だと思う程、其の事実に腹が立った


 (畜生)


 言い表せないような苛立ちばかりが募る

 (…なんだってんだ)



 それはどこか、喪失感にも似ていた





 そして今更に思い知る
 昔、きっとあのちいさな子供がきっと自分に対して抱いたであろう感情を


 (嗚呼、胸糞悪ィ)








 『其処はほんとうは自分の場所なのに







2006.10.01




銀←沖←土 みたいな…?
トシからしたら総悟が自分には絶対頼らないのに、
よりにもよって銀さんには頼るってのはさぞかし面白くなかろうよ
という、そんな感じです。えと、トシがヘタレ入っててスイマセ…!
煉獄関のくだりのイメージだったりします