学校から最寄のコンビニまで、早歩きで約五分。
委員会のミーティングがはじまる前にと買い物から急いで走って戻って来たら、丁度昇降口のところで土方さんと鉢合わせした。
「山崎、なんだ買出しか?」
「はい」
副委員長の土方さんが此処に居るという事は、まだミーティングは始まっていない筈だ。つまり遅刻の心配も無いという事。
教室に向かう土方さんの足取りがゆっくりなのに安心して、俺も足取りを緩める。
陽気がいい所為と走った所為で、少し蒸し暑い。
俺の歩調に合わせて、右手に持ったコンビニのビニール袋ががさがさと音を立てた。
「お前何それ、すげー量の菓子だな」
ペットボトルのジュースやらスナック菓子やらチョコレートやら風船ガムやらで一杯の、大きく膨れた袋を見て少し呆れたような口調で土方さんが言う。
確かにこの中身じゃ、まるでちいさい子供の嗜好全開なセレクトだなあと俺も思う。
「あ、これは沖田さんが買ってきてくれって言うんで」
「総悟がァ?ったく、しょうがねーなアイツは」
「いいんですよ、俺も用がありましたからついでですし」
実際俺の用事は袋の殆どを占領するそのうちのどれでもなくて、菓子でぱんぱんの袋の隅っこに、半ば無理矢理詰め込まれたレポート用紙一冊でしかなかったのだけど。
俺の返答に土方さんは渋い顔をして、溜息をひとつ吐いた。
「山崎、お前総悟に甘いのも程々にしとけよ。じゃねえとアイツすぐ調子乗っからな」
「はは…まあでも、沖田さんあれでいて誰にでも言う訳じゃないみたいですし」
「アイツは頭カラな癖に狡賢いからな、自分に甘くて我侭言っても通りそうな奴にしか言わねーんだよ」
皆甘いんだよ全く
土方さんは苦々しくそうぼやいたけれど、
その理屈で考えると、いつも沖田さんに散々我侭言われまくってる筈のこのひとも、つまりは相当甘いってことだよなあと、今更ながら改めて思った。
スイートビターズ
2007.04.14
3Z土方と山崎。甘やかし二人。
語るに落ちる土方を書きたかったという(…)。
別に3Zじゃなくても良かったなコレ。